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2024年12月5日に開催されたロープネット・ロックボルト併用工法研究会主催「令和6年度 斜面対策工法の新しい考え方(耐震を含む)」講演会において、(株)ジオ・フォレスト 代表取締役 戸田堅一郎様より「CS立体図を使った崩壊危険地形の判読」のタイトルで講演して頂きましたので、以下にその講演の概要を紹介します。
なお下記の内容は、講演会時の配布資料をもとに弊社において抜粋、編集したものです。
3.CS立体図による基本的な地形表現
森林基本図 CS立体図
1.尾根(凸地)は赤、谷(凹地)は青
2.急傾斜地は暗、緩傾斜地は明
宮崎県「ひなたGISURL(https://hgis.pref.miyazaki.lg.jp/hinata/)」の3D機能による表示
4.CS立体図による災害危険地形の判読
1)谷頭部 -侵食前線-
・1次谷流域より1オーダー下の流域 ・侵食前線の模式図
・表層崩壊の発生源
(塚本良則)
谷頭(侵食前線):国土地理院の地形図から谷頭を判読するのは難しいが、CS立体図では、1次谷は明瞭な濃い青、0次谷は薄い青で表現されているため容易に判読できる。
(出典:長野県CS立体図)
1次谷(明瞭な谷):水の流れによって侵食された深い谷。常水があるか、普段は水がなくても豪雨時には水が流れるため、路網開設する場合は暗渠などの横断排水施設が必要となる。
0次谷(常水のない浅い谷地形):もともと谷地形だったところを、周囲からの崩積土などが埋めている。上流に向かって侵食が進行する。この位置に路網開設する場合は、集水面積を変えないように、路面排水の設置や波型縦断線形にするなどの対策が必要となる。
(出典:長野県CS立体図)
2)地質構造による湧泉(ゆうせん)
地質構造による湧泉の模式図
この現場では、現地調査時に湧水が確認できたが、季節や事前の雨量の状況によっては湧水が見られないこともある。路網開設時に湧水がなくても、豪雨時に出水することがあるので注意が必要となる。特に、このような場所に盛土すると、崩壊して土石流化する危険性がある。
(出典:長野県CS立体図、写真提供:長野県林業総合センター)
3)地すべり
地すべり地形の模式図
横断亀裂:等高線方向の亀裂、または凹地形。
内部の二次すべり:内部にさらに小規模な地すべりが発生し複数構造になる場合もある。
突端部:押し出されて、侵食を受けやすい。
後方亀裂:新しい滑落崖の発生源。
滑落崖:急崖になる。不動域内のため、比較的安定している。
頭部:平坦地や凹地形、池になっている場合もある。
側方崖:移動体の端に沿って湾曲し、上流部で反対側の横断亀裂とつながる場合がある。
地すべり:斜面の一部あるいは全部が重力によって斜面下方に(ゆっくりと)移動する現象
深層崩壊:豪雨等が誘因になり基盤岩から崩壊
ひなたGISなどの3D表示機能を使い様々な角度から表示すると、地すべりの判読がさらに容易になる。
(出典:長野県CS立体図)
4)沖積錘
沖積錐の模式図
沖積錘:急勾配の河谷の出口に白っぽくみえる、主として土石流の堆積が繰り返されて形成された扇形の地形。路網開設を行うと、上流からの土石流の被害を頻繁に受けやすい。
土砂発生源:上流部分にある侵食が激しい区域。斜面崩壊が頻繁に発生する。
冲積錘は崩積土でできているため、透水性が良く、谷の水は地中に浸透している。
(出典:静岡県CS立体図、写真提供:長野県林業総合センター)
5)人工改変
人工改変の模式図
CS立体図では、凸地形は赤、凹地形は青、平坦地形は白で表現されるため、人工的に作成された平坦地形は、上図のようなカラーパターンで表現される。
(出典:岐阜県CS立体図)
耕作跡地:耕作のために人工的に階段状の地形にした痕跡。施肥により黒色土であることが多い。樹木の生長は良いが、植栽する樹種の選定には注意が必要となる。
炭焼きの窯跡:一見すると湧泉に似ているが、下方に水や土砂が流下した痕跡がない。里山に多くみられる。
現在は森林化している場所では、等高線による地形図や空中写真から、耕作跡地や炭焼き窯跡を判読することはできない。
(出典:長野県CS立体図、国土地理院)
能登半島地震での盛土崩壊事例
CS立体図(地震前)
CS立体図(地震後)
「CS立体図について(3)」では、CS立体図の利活用事例を紹介します。