2024年12月5日に開催されたロープネット・ロックボルト併用工法研究会主催「令和6年度 斜面対策工法の新しい考え方(耐震を含む)」講演会において、(株)ジオ・フォレスト 代表取締役 戸田堅一郎様より「CS立体図を使った崩壊危険地形の判読」のタイトルで講演して頂きましたので、以下にその講演の概要を紹介します。
なお下記の内容は、講演会時の配布資料をもとに弊社において抜粋、編集したものです。
1.地形判読の基礎
図-1 大地に残された様々な地形
まず「地形」とは、「地殻変動」、「火山活動」、「水の力」、「風の力」、「人工改変」など、その場所で過去に発生した現象の痕跡であり、これらの現象(=災害)は、同じ場所で繰り返し発生する(今後も同様な現象が発生する)可能性が高いと考えられます。
したがって、地形判読から将来の災害を予測し、適切な対策をすることが可能となります。
地形判読を行う際、地形図から判読できる地形情報としては、「地形量」と「地形種」があります。
「地形量」:長さ、面積、それらの比など定量化できる形態要素で誰が計測しても同じ値となるもの(標高、傾斜、曲率、面積、体積、方位、起伏量 など)。
標高
傾斜
曲率(平面曲率)
曲率(縦断曲率)
「地形種」:特定の成因によって形成された特定の形態的特徴をもつ地形の部分で判読者の解釈によって判断が異なるもの(扇状地、崖錐、地すべり滑落崖、地すべり側方崖 など)
「地形量」が同じでも「地形種」によって性質が異なり、標高、傾斜、曲率等の地形量から地形種を「解釈」する必要がある。
2.CS立体図
形だけから地形種の判読は、
・判読者によって結果が異なる
・初心者には難しい
そのような経緯から、地形判読を容易にするツールとして、CS立体図を開発。
CS立体図とは、
標高」「傾斜」「曲率」の3つの情報に色を付け、重ねて透過処理することで立体表現した図法(2012年に長野県林業総合センターで考案)で、以下のような特徴があります。
・視覚情報から直感的に情報を認識可能
・異なる情報を同時に認識可能
・等高線では表現が困難な情報も認識可能
(「CS」とは、曲率(Curvature)と傾斜(Slope)の頭文字)
CS立体図作製の流れ図
参考
○林野庁から
「CS立体図を使った地形判読マニュアル」
(https://www.rinya.maff.go.jp/j/seibi/sagyoudo/attach/pdf/romou-17.pdf)(令和5(2023)年3月) が発行されています。
○幾つかのCS立体図の作成ツールが無料で公開、配布されています。
⇒DEMデータを使ってCS立体図を作成することが可能です。
・ArcGIS版:作成(森林総合研究所 大丸裕武氏)
G空間情報センターから入手可能 (ArcGIS本体は要購入)
(https://www.geospatial.jp/ckan/dataset/csmapmaker)
・QGIS版(作成:ミエルネ 朝日孝輔氏)
QGISのプラグインから「CSMapMaker」をインストール
・FME版 CS立体図自動作成ワークスペース(作成:Pacific Spatial Solutions)
データ変換ソフトのFMEを使ったCS立体図自動作成ツール(FMEは要購入)
○公開済みCS立体図の多くはG空間情報センターからダウンロードできます。
オープンデータとして公開中のCS立体図(2024.11 現在)
「CS立体図について(2)」では、CS立体図を用いた地形判読の事例を紹介します。