住みよい社会の実現に 株式会社ダイカ

急傾斜などの斜面対策と景観・緑の保全について

今回は、斜面崩壊防止工事における「景観の保全」、「緑(樹木)の保全」への配慮の必要性、そしてユニットネット工法を用いてこれらを実現している事例について紹介します。

「新・斜面崩壊防止工事の設計と実例」

「新・斜面崩壊防止工事の設計と実例」を読むと調査・計画の章の中に景観・緑の保全について触れている部分があります。

一部をご紹介すると、

「斜面崩壊防止工事の計画にあたっては……斜面の安全性の確保をベースに地域の特性を考え、ふさわしい斜面のあり方を検討する。斜面が地域の特徴的な景観形成の大きな要素であれば、できるだけこれを守ることを検討する。

例えば、斜面が歴史的な街並みを構成する重要な要素である場合は防止工事施工後もその街のイメージに調和した斜面であるように計画することが望ましい。1本1本の樹木の形態から、それらの樹木が重なり合う美しさが、そのイメージに合うものであれば、急傾斜地においても可能な限りこの美しい斜面樹木を途切れさせないような斜面樹木の形成を検討する。

(中略)

居住区、特に都市部の緑豊かな斜面は残された数少ない緑の空間として貴重な存在である。人口の増加とともに市街地の緑は急速に減少している。……しかし、一見美しいこのような緑地空間は雨水や寒暖の差による風化等でがけ崩れの危険性も高くなっていることがある。

このような斜面では景観や生態系にできるだけ配慮して、既存木の保全や、植生の導入を行い、斜面をグリーンベルトとして整備することが望まれている。斜面からの土砂災害を防ぐのが基本であるのは当然であるが、既往の優れた技術や経験を生かし、あるいは、新たな技術開発を行って、緑の保全を検討することになる。

この方法としては、既存の樹木を残す方法と斜面崩壊防止施工時に斜面に新たに樹木等の植生を導入する方法とがあり、後者では、急傾斜に花を植栽して美しい景観を創造した事例も報告されている。両方の方法とも既存の技術では不十分なところがあり、新しい技術の開発が望まれている。」(新・斜面崩壊防止工事の設計と実例 -急傾斜地崩壊防止工事技術指針― 本編 一般財団法人 全国地水砂防協会 P11~12 抜粋)

以上のように、斜面崩壊防止工を行うにあたってはその地域の特性をよく理解し地域の街並みや景観に配慮することが望ましい、ということが書かれています。

「景観の保全」

歴史的な街並みを有する居住区というと、関西ではやはり京都市がイメージされます。京都市は「京都市眺望景観創生条例」という景観に関するガイドラインをきちんと整備しています。京都は優れた自然景観の中に世界遺産を含んだ数多くの神社仏閣などの歴史的資産や街並みが形成されており、この素晴らしい眺望自体を国民の財産ととらえて将来的に守っていきながら新たな創造も育もうというものです。

市民活動においても森を守り育てる活動をされていますし、斜面対策にあたってもこうした景観や自然の保全については真摯に取り組んでおられます。

以前京都市の発注工事でまさしくこれに当てはまる案件がありました。金閣寺地区で行われた斜面対策工事です。写真でよく見る金色に輝く鹿苑寺舎利殿は南側の鏡湖池に向かって建てられていますが、背面の北側には大北山が控えています。工事は鹿苑寺舎利殿から直線距離で150m程度の場所である大北山の西側斜面で行われました。この現場ではユニットネット工法が約2500㎡施工されており、ユニットネット工法によって金閣寺周辺の歴史的な街並みを損なうことなく、斜面の補強・崩壊対策が成されています。

また、山科へぬける道路法面において、擁壁上部の自然斜面で1000㎡程、そのほか京都市内だけで30件ほどユニットネット工法の採用実績があります。

「緑の保全」

自然斜面ではありませんが、植林地での一例をご紹介します。

梅林の中での工事の様子と翌年の開花時期の写真です。

 

 

 

 

 

この斜面では一部分が斜面崩壊を起こした経緯があり、斜面全体の崩壊対策でユニットネット工法が採用されました。作業はロープ足場で施工可能なガイド付きの削孔機が使用され、足場を組むこともありませんでした。

梅林や桜などがある斜面では、景観配慮の観点から樹木を残すことが多くなっていますので、ユニットネット工法は非常に有効といえます。ユニットネット工法であれば、斜面対策後に新たに樹木や草を植えるといったときにでも、土に直接触ることが出来るため苗木を植えることも種子をまくことも可能です。

「斜面対策と計画」

植物は地表面の浸食や土砂の流出を防止する役目や保水機能も期待でき、斜面の健全化に大きな意味を持つものと考えます。また、昆虫や小鳥などが住めるような環境作りにも役立ちます。

斜面の安定性を重視すれば、樹木の伐採や切土などを行い、法枠などのコンクリート構造物で斜面を覆うような計画をすると思います。樹木を残して施工をしている事例もありますが、木の根の成長によりコンクリートを割ってしまい、逆に構造物としての効果を損なわせることにもなりかねません。

斜面対策においては、斜面の安定性だけでなく、その地域やニーズに合わせ、景観や生態系の保全も考えながら実施することが大切だと考えます。