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ユニットネット工法:施工事例紹介(津波避難所・避難路)

近年、台風被害や豪雨災害もさることながら、全国的に地震被害も頻発しています。直近では、令和6年1月1日に能登半島地震が発生しました。この地震によりインフラ全般への被害も甚大でした。発生から2カ月以上経過していますが、特に水道関係の復旧のめどすらも立たない状況の地域も多くあります。また、東日本大震災以来、日本付近で発生した地震により多大な津波被害も発生し、到達したエリアは広範囲に及びました。この津波被害に対する備えとして、津波避難路の斜面対策を実施した事例を2つご紹介します。

施工事例:徳島県鞆浦

今回、ご紹介するのは2018年6月~2021年3月の間に徳島県土整備局美波庁舎で実施された急傾斜地崩壊防止工事です。

徳島県が作成した「平成30年度 県土整備部環境配慮事例報告書」に、事業の目的及び概要は次のように記載されています。

“山下急傾斜地崩壊危険区域は、人家51戸及び地域防災計画に記載された津波避難場所である 「城山山下津波避難所」を保全対象に含む急傾斜地であり、「南海トラフ巨大地震」発生時の津波の浸水区域に位置している。このため急傾斜地崩壊防止施設の整備と併せ、管理用道路を津波避難場所への避難路として利用できるよう整備するものである。”

 

 

 

 

 

 

山下地区は海陽町指定史跡である海部城跡を含んでおり、城跡という景観を保護しながら、既存樹木の伐採を法枠工法に比べ少なくすることが出来るためユニットネット工法が採用されました。

 

 

 

 

 

 

 

遠景(鞆浦漁港付近より)

 

 

 

 

 

 

 

施工直後(2020年5月)

遠景写真のように、本現場は漁港から非常に近く、南海トラフ巨大地震発生の際には津波被害を受ける危険性が考えられ、早急に高台へ避難する必要があることがわかります。地震発生後にすぐに裏山へ避難しようとしても、地震で斜面崩壊が発生し、避難路が使えなくなってしまっては何の意味もありません。

実際、近年発生した阪神淡路大震災(1995年)や東日本大震災(2011年)、熊本地震(2016年)においても、数多くの斜面崩壊が発生していますので、地震による斜面崩壊に対する備えが必要になります。

 

 

 

 

 

 

 

小石の落石防止のため、高耐久のDKネット(塩害対策)と併用(2020年5月)

前述のように、海に近いことから鉄製品については塩害による影響も考えられます。ユニットネットについては亜鉛アルミ合金メッキを施しており、塩害に対しても効果が見込める仕様となっています。ところが、本現場には小石も点在しており、ユニットネットのメッシュ(50cm角)では小石の落石の懸念がありました。

このような場合、通常は亜鉛メッキを施した金網等を併用することで落石を防止することが多いのですが、通常の金網では塩害の影響について心配がありました。そこで、高耐久繊維ネットであるDKネットを併用することで、落石に対しても長期保護を実現しました。

施工事例:三重県相賀

次に、ご紹介するのは2014年3月に三重県尾鷲農林水産事務所で実施された治山工事です。現場は三重県北牟婁郡紀北町で、東日本大震災後、地元住民が自主的に避難所の整備をしました。整備された避難所は新町公園地避難所となり、そこへ向かう津波避難路について、地震時の斜面崩壊防止のためユニットネット工法で補強することになりました。

ユニットネット工法が採用された理由は、兵庫県において阪神淡路大震災以降、地震による斜面崩壊への対策の1つとして施工されているロープネット・ロックボルト併用工法(RR工法)の部材の1つとしてユニットネットが使用されており、この実績も評価されたためです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当初は地元住民により自主的に整備された避難所ですが、現在は町役場のホームページに正式な避難所として記載されています。

 

 

 

 

 

 

植生マット工併用部(2014年3月)

こちらは施工完了直後の写真です。

斜面の法尻は避難路として道幅を確保するために切土を実施しています。切土面については、緑化工法(植生マット)を併用することで浸食防止・法面保護を期待しています。

 

 

 

 

 

 

 

2022年3月の状況

2014年の施工後、避難路として舗装や柵の設置も行われており、現在も整備されています。万が一に備え整備を怠るわけにはいきませんが、この道を使わなくて済むに越したことはないですね。

まとめ

今回、津波避難路の斜面対策を2つご紹介させて頂きました。冒頭にも記載しましたが、能登半島地震は自然の猛威を再認識させられた出来事となりました。現在の技術では、地震を止めることも地震による津波を止めることも出来ません。

ですが、備え、対策を行うことで助かる命もあると思います。今回の事例がその1つとして参考になればと思います。

情報引用先(出典)

〇徳島県ホームページ 平成30年度県土整備部環境配慮事例報告書

https://www.pref.tokushima.lg.jp/file/attachment/540176.pdf

〇紀北町ホームページ

https://www.town.mie-kihoku.lg.jp/material/files/group/9/siteikinkyu.pdf

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